事業承継税制
事業承継税制(現行)とは
事業承継税制とは、現経営者が保有している会社の株式を後継者に贈与・相続を行う際に発生する贈与税と相続税を、猶予・免除する制度のことです。
事業承継税制の特例とは
期間限定(2023年3月末まで)で現金負担がゼロ
事業承継時の贈与税・相続税を100%猶予・免除できる唯一の制度
今後5年以内に『特例承継計画』を提出し、10年以内に実際に承継を行うものを対象に、現行の事業承継税制をより使いやすくした制度です。この特例により、事業承継自体に係る負担をより少なくするだけでなく、現行の事業承継税制におけるリスクであった経営環境の変化による継続要件の維持が軽減され、後継者にとっても非常に魅力的な内容になっています。
負担軽減、使い勝手向上により事業承継をより加速させる狙い
日本を支える中小企業経営者の高齢化が進み、経営者の多くが引退を考えられる年齢になりました。このような中で、事業承継の後押しとして『事業承継税制』が設けられました。しかし、かつての『事業承継税制』は適用要件が厳しいなど、非常に使い勝手が悪いために利用者が少ない状況でした。そのため今回の特例においては、多くの中小企業で大きな課題となっている事業承継を加速させるために、適用要件が大きく緩和されることになりました。
改正のポイント
今回の特例で改正されたポイントは以下の通りです。すべてにおいて事業承継の負担が軽減される内容になっています。特に、『現金負担ゼロ』で事業承継が行えるのはこの事業承継税制のみです。
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現行
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特例
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・ 現行
株式:発行済み株式の3分の2
猶予
・相続税:対象株式に係る80%
・贈与税:対象株式に係る100%
※実際の猶予額は全体の53%
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・ 特例
株式:全ての議決権株式
猶予
・相続税:対象株式に係る100%
・贈与税:対象株式に係る100%
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・ 現行
5年間平均で、贈与・相続時の雇用8割を維持。
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・ 特例
雇用平均が8割未達でも、一定の書類を提出することにより猶予は継続。
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・ 現行
1人の先代経営者から1人の後継者のみ
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・ 特例
複数の株主から、後継者(最大3人)まで
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・ 現行
承継時の株価で算定
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・ 特例
一定の要件を満たす場合において、承継時の価額を下回る時は差額を免除
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・ 現行
原則として直系卑属への贈与のみ
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・ 特例
現行制度に加えて、贈与者の子
事業承継税制(特例)を受けるための要件
この特例の適用を受けるためには以下の2点を満たしていることが必要です。
- 2018年4月1日から2023年3月31日までに、都道府県庁に「特例承継計画」を提出していること。
- 2018年1月1日から2027年12月31日までに、贈与・相続(遺贈を含む)により自社の株式を取得すること。
(出典:中小企業庁「事業承継改正の概要」)
特例承認計画の作成
事業承継税制を受けるには2018年4月1日から2023年3月31日の期間中に、各都道府県庁に対し特例承認計画を提出する必要があります。特例承認計画とは会社が認定支援機関の指導・助言に基づいて作成する必要があります。
事業承継をお考えの経営者様は「会社経営者・個人事業者の方へ」もご参考ください。
改正のポイント解説
100%に拡大税負担ゼロ
現行制度では株式上限3分の2からさらに猶予割合が80%なので、実際の猶予額は全体の約53%でした。 特例では、取得する株式の上限3分の2がなくなり、納税猶予の適用対象が100%になりました。
さらに、後継者が先代(会社の代表者)から株式の贈与を受けた場合には、その取得した「全株式」に係る課税価格に対応する贈与税および相続税について、これまで80%であった納税猶予額が100%になりました。その結果事業承継にかかる金銭的負担はゼロになります。
現行制度
納税猶予の対象になるのは、発行済議決権株式総数の2/3までであり、相続税の納税猶予割合は80%。そのため、実際に猶予される額は全体の53%にとどまる。
8割以上未達猶予継続可能
雇用要件の緩和
現行の事業承継税制では贈与・相続後の5年間の平均で従業員の雇用8割を維持することが求められていましたが、昨今の人手不足問題もありとても難しい要件となっていました。 特例では、5年間平均で雇用8割を維持できなかった場合でも、納税猶予がすぐには取り消されなくなりました。
猶予を継続するには、雇用8割を満たせなかった理由などを記載した一定の書類を都道府県に提出する必要があります。(認定支援機関の指導助言が必要です。)また、雇用を満たせなかった理由が経営の悪化や正当なものと認められない場合は、認定支援機関の指導・助言を受ける必要があります。
現行制度
5年間の雇用平均が8割未達の場合、猶予された税額を全額納付。
複数の株主最大3人
先代(会社の代表者)以外の株主から贈与された株式も対象になりました。 後継者が、先代(会社の代表者)以外の株主から受けた贈与についても、5年以内に贈与税の申告をすることで、適用対象とされることになりました。
これは、現行の事業承継税制にもさかのぼって適用されることになり、複数の贈与者から贈与された「株式」に係る税額も納税猶予の対象となります。(最大3人の後継者、複数人で承継することもできるようになりました。)
現行制度
一人の先代経営者から一人の後継者へ贈与・相続される場合のみが対象。
納税額再計算差額を減免
経営環境が悪化した場合の特例として、5年経過後に株式を譲渡する時、合併によって会社が消滅する時、会社が解散する時などには、納税猶予額が免除されることになりました。
現行制度
事業承継時の株価を元に贈与税額・相続税額を算定し、猶予取り消しとなった場合には、その贈与税額・相続税額を納税する必要がある(過大な税負担が生じうる)。
相続時精算課税制度の拡大
20歳以上の後継者が、60歳以上の贈与者の推定相続人以外であっても、相続時精算課税の適用を受けることができるようになりました。(贈与者の子や孫でない場合でも適用可能になりました。)
その結果、猶予取り消し時における過大な税負担が生じないようになりました。
現行制度
60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子または孫への贈与が相続時精算課税制度の対象。
事業承継を早めに準備する大切さは分かったけれど
- ① 日々の経営で精一杯
- ② 何から始めればよいかわからない
- ③ 誰に相談すればよいのかわかならい
